top of page

ニート24h

第二話

​くる





am11:00

おにぎりだけでは当然食欲が満たされず、台所をしばらく漁った。たしか、インスタントラーメンがまだ残っていたはずだ。それが見つからない。むきになってしばらく流しの下をごそごそやっていた。
「うわっ……いつのだよ……」
腐った野菜を発掘してしまい思わず声が出た。ラーメン以外のものならたくさんあった。鍋、大量のタオルとレジ袋、使い切ったサランラップの芯、新聞紙、飲みかけのペットボトル、本まである。
ラーメンだけがない。ない。ない。ないないない。次第にいらいらが募る。棚の闇に突っ込んだ手に触れたものを、引き抜いて、投げ捨てていく。ゴミ袋に、開けさしのスパゲティ、ふたのないタッパー、雑誌、レジ袋、タオル、レジ袋、タオル。中身のないものばかり、床に落ちる音さえ頼りなくてむなしかった。
「あーちくしょー……」
欲しいものはいつも手に入らない。ラーメンごときで悲観的になる自分がいちばん面倒だとわかっているのに気持ちが沈んでいくのを止めることができない。


pm0:00

カサカサ、という音で我にかえり、目の前をゴキブリが横切っていった。泣きっ面にゴキブリ。ここまでくると殺意は湧かず、好きにしたらいいと思った。
ここはお前に明け渡す。そんなふざけたことを思いながらよろよろと立ち上がる。外へ出よう、そしてラーメンを手に入れよう。
財布と煙草と、それ以外に何か必要だろうかと考えたけれど、答えはなにもなかった。そしてその結論は、コンビニだけではなくどこへ行こうとも同じなのだ。


pm1:00

鍵を閉めずに家を出る。翳っていた空はいつのまにか雲が散り、照りつける日差しが眩しい。
いつの日だったか、誓ったのにな。光を眺めていると、遠い昔のことが思い出された。
幼かったあの頃、かっこいい大人になって世界を変えてやろうと友達と約束した。あるときは青空を仰ぐように外を駆け回りながら、またあるときは星を集めるように秘密基地の中で内緒話をしながら。明るい未来を信じて疑わなかった。
ところが今は言わずもがな、この体たらくた。当時の自分が見たら失望するだろう、いや、まさか自分とは思わないかもしれない。
そんなことを考えながらアパートの裏道を歩いていると、
「あ、」
そこで、出くわしてしまった。























 

桜の花びら
bottom of page