はじめての
「……オイ、ウソだろ」
リヴァイが震え声で言った。
「嘘じゃない。本当だ」
疑われるのは心外だとばかりに、エルヴィンが溜息を吐く。
本来ならば分隊長としての就業時間中ではあったが、雪崩れ込んでしまったのは仕方がない。
二人とも制服のまま、それぞれ必要な部分だけそれを開けて、無理やりコトに及ぼうとした、今はまさにその時だった。
「――何だって、こんな切羽詰まったときにゴムがねえとか言い出しやがるんだこのクソ金髪野郎は!」
二人は臨戦態勢だった。
リヴァイの苛立ったその声に、うるさい、と返しながらもエルヴィンはリヴァイを窘めない。
既に額には汗が滲んでおり、股間は反り返っている。
リヴァイはそれを見ながら舌打ちをした。自分も薄っすら汗を掻いてきていたし、尻の間はエルヴィンの指を三本も含んで、拡がってグチャグチャに濡れている。
はあ、と溜息を吐いたエルヴィンのモノがふるりと微かに揺れるのを見て、気づかれないように生唾を飲み込んだ。
リヴァイが周囲へ零すところの『お高いお堅いクソキンパツ分隊長殿』が『ゴロツキ上がりの異色な新兵』と寝るようにはなったが、リヴァイの思い返す限り、これまでコトの始まりは平和で甘かったことはない。
今回も互いの苛々が募って口論に近くなり、可愛くない口だ最中には多少可愛げもあるのにな誰が可愛いだってお前だよおチビさんうるせえデケェだけの長物が戦場で役に立つのかと至近距離で罵り合ううちに、いつの間にかキスしていた。
そして私室へ引っ張り込まれ、奪い合うようなキスからマウントを取り合うように寝台へ雪崩れ込み、乱暴に身体をまさぐり合う内に二人ともスッカリその気になってしまった。
狭いソコをぐちゅぐちゅと掻き回され拡げられて息を乱すリヴァイは感じているのが自分だけなのが悔しいために、エルヴィンのモノを扱いて追い上げ息も絶え絶えにサアいざ挿入だと言うのがたった今までの出来事だった。
「よ、予備は」
「この箱が最後だ。……ゴムが無いとすると、仕方ない、着けずに挿れて、外で出す。これだ」
「これだ、じゃねえ!名案を思い付いたみたいな顔は止めろ!」
「声が大きい。大丈夫だ、ちゃんと外で出せる。気がする」
「気がするじゃ困るだろうが!……てめえ、ナマでしてえための方便じゃねえだろな?!」
「断じて違う。ゴムの在庫を失念していたのは謝るが、一昨日まではまだあったんだ。確かに三つあった。一昨日の夜、二つ使って、その事後だ。お前がまさに『散々楽しんで乱れました。気持ち良かったです』と顔にでかでかと書いてあるようなイヤラシイ顔でイヤラシイ溜息など吐くのがいけない。アレで回復しない男はいない」
「俺のせいだってのかよチンポの暴走を止められなかったてめえに責任は無いとでも」
「……リヴァイ、状況を見ろ。私はもうかなり引けないところまで来ている。お前はどうだ?お前はイく寸前だった。寸止めされて怒るのは分かるが、この状況、どう考えても挿れるしかないだろう」
「……う、クソ…………」
リヴァイはギリ、と歯軋りすると、組み敷かれたまま器用に掴みかかっていた手を離し、寝台へ体重を預けた。
硬く閉じたままだった膝の力を緩め、顔を背けると膝を立てて脚を開いた。
「そうだ、それでいい。お前は状況判断が早くて助かるよ」
「ハ、うるせえ、とっとと入れろ……ッ」
突き出している尻をエルヴィンの大きな手が揉み込むように撫でたため、吐息を漏らしながらリヴァイは精いっぱいの悪態をついた。
「低い。もっと尻を上げろ」
「無茶言うな、クソむかつくがてめえはタッパがある、そして俺はチビだ。俺の膝の限界はここだ、お前が屈め……っ」
「屈むのにも限界がある。枕を膝の下に入れよう。」
「ああ、もう、クソッ……!」
寸止めされ続けているリヴァイは苛立ちながらも『分隊長殿』の『仰ること』を素直に聞き、膝の下に枕を入れた。
めいいっぱい高く上げた尻たぶに、やっと望んでいたモノが触れる。
これだけ無駄話をしていたにも関わらず、エルヴィンのモノは反り返ってカチカチのままだった。
エルヴィンがそのモノを握って位置を調整している。
濡れた先が待ちくたびれていた穴に触れ、チュポ、と小さな吸着音を立てる。
「あ……ッ」
その感触と音に、期待感が高まる。
「あッ、あ、ぁう、ン、んッ……!」
ぬる、ヌチュ、ぬぽ、チュポ、と、繰り返される動作と音に、リヴァイの興奮は最高潮だ。
切っ先で穴をこじられるようにされるたび、穴はひくつき、奥が疼く。
「いやらしい穴だな。ひくついている」
「……るせぇッ……!あっあっ、はやく、入れろ……!」
「入れろ?『分隊長殿』に対してその口の利き方はないだろう。『新兵』」
「あ、あっ……!入る………!」
「まだだ。先だけ。……ああ、生だと随分、熱く感じるな……」
「あ!いやだ、何で抜……ッ」
「きちんとお願いしてみせろ。それとも尻か背中に撒いてやろうか?」
薄い分、流れて汚れそうだな、とエルヴィンは口を歪めて笑った。
「ぅあ、はッ……!あ!いれ……ッ」
入り口をかき混ぜるように、含ませた先でぬちゅぬちゅと掻き混ぜられ、リヴァイの頭は沸騰しそうだった。
――欲しい。中に欲しい。出来るなら奥に欲しい。
ゴム1枚が無いとこんなに違うのか、とリヴァイは焦るように思った。
熱が直接伝わることで、互いの肉が吸い付いて馴染み、児戯のような接触でも感じて、より欲しくなってしまう。
リヴァイは尻を揺らしながら、ギリリと歯噛みした。
「く、ッ……ください、分隊長殿、ッ、奥、奥までいれてくださぃ……ッ!」
「いい子だ。」
その時だった。
バキ!という乾いた大きな音がした途端、二人の乗ったベッドが揺れた。
ベッドの脚が折れたのだ。
「あッ!?」
「うわッ!」
がたんッと派手な音を立ててベッドが傾き、リヴァイの頭を向けているほうへふたりは倒れこんだ。
「ァ……~~~!?」
四つん這いで尻を掲げていたリヴァイは、突然降ってきたエルヴィンの重い肉体に悲鳴を上げた。
倒れた拍子に、エルヴィンの入れかかっていたものが奥まで届き、リヴァイの中を奥の奥まで貫いてしまったのだ。
「あッ!あ!ああ……!」
でてる、ア、出てる、とリヴァイはうわ言のように繰り返した。
触れられもしないリヴァイのモノは腹とベッドのあいだで押しつぶされ、シーツにたっぷりと精液を吐き出している。
出るたび、奥にずっぷりと突き込まれたままのエルヴィンのモノをぎゅうと締め付けてしまい、快感に投げ出されてしまったようなリヴァイは朦朧としたまま腰を振っている。
射精感は随分と長く続き、実際シーツに染みこんでいった量は相当にあった。
息も絶え絶えに射精を終えると、潰されたままのエルヴィンの重い肉体に気がついた。
「は……ハ……。出ちまった……。……オイ、金髪。オイ。おい、エルヴィン!」
珍しく名前で呼ぶと、リヴァイを下敷きにしていたエルヴィンも気がついた。
「……リヴァイ。すまない」
「ハ?……あ。」
てめえ、まさかとリヴァイは言って振り返った。
俯いているエルヴィンの顔には前髪が掛かっていた。
「お前まさか出し……」
エルヴィンの顔は真赤だった。
――分隊長サマが、うっかりイっちまって、照れてやがる。
そのことに気がついたリヴァイも、つられたように赤くなった。
「凄かったんだ。引き絞られるような感じで、しかもナマだから、お前の中がいつもより熱くて濡れていて……」
その後も、顔の赤みが引いて普段通りの『分隊長殿』に戻ったエルヴィンだったが、繰り返し繰り返し、『アレはアクシデントだった。』と弁解をするように言い訳が続いた。
リヴァイは『分隊長サマもナマ中出しには弱いのか。』ということと、『コイツにも意外と可愛いところがあるな。』という二つのことを学び、エルヴィンを見る目が多少変わったような気がしたのだった。