マーレの退屈な午後
エルビン・スミスはその体格に相応しい長い手脚を持っている。マーレの既製の制服は誰にでも合うようにか大ぶりに作ってあり、それは彼の好むところではなかった。その長い手脚に、その厚い胸板に、括れた腰に、ピッタリと誂えたものを揃えさせている。軍靴も、少し細めに作ってある。それが、豹のようにしなやかに歩くとカツカツ鳴るのを、エルビン・スミスは懐かしく聴いていた。
廊下の角を曲がり、執務室の扉を開ける。
「お帰りなさいませ」
「鍵を」
「了解致しました」
彼の副官であるリバイ・アッカーマンはそれだけの指示で、扉の鍵を掛け、自らの衣服を寛げた。
「ああ」
「下だけで良い。時間はそう無い」
「は」
リバイ・アッカーマンはそう返すと、制服の下だけを下ろし、軍靴もそのままに、背後を向き、「失礼します」とだけ言って、執務机に乗り上げて腰を上げ、脚を開いた。
エルビン・スミスは、彼の制服の一つである革の白手袋をギュ、と癖のように引っ張ると、副官が予め用意した傍らの瓶を手に取った。
そしてそれを逆さにし、副官の尻へ垂らした。そこへ、まだ完全には勃起しきっていない、彼のペニスを取り出すと、そのあいだへ何度か擦り付ける。
「ふ」
副官が小さく息を吐き、身を捩る。
擽ったさからか、また、期待にか、副官の肌が粟立ってくるのを、エルビン・スミスは見ていない。
育ち切った凶器のようなペニスを、ついには副官のアヌスへ挿し込むと、単調な前後運動を開始した。
「……は、ァ……ッ!」
副官の露わになっている青白い尻を、手袋のまま掴み、揺すり上げる。
「黙っていろ」
「申し訳……ありません……ッ」
副官であるリバイ・アッカーマンはそう謝罪するが、彼の直属の上司、絶対的主人であるところのエルビン・スミスの意識はもう既に副官に無い。
腰の運動を続けながら、懐から煙草入れを取り出す。火を点けた後のマッチを振って消す。深く吸い込んでフウ、と吐き出せば、紫煙が漂う。
エルディアで吸っていたのとは勿論、別の銘柄だ。タール量の違いを、慣れた舌はよく覚えている。不味く感じて、何度か吸い吐きを繰り返すと、徐ろに放り、踵でジリと潰す。
「次作戦の用意は」
「……はッ、してあります、ッ……」
「そうか」
エルビン・スミスはそれだけ返すと、終わらせるための深いグラインドを開始した。
「ひッ……ゥッ……!」
リバイ・アッカーマンは主人の思考の邪魔にならぬよう、掌で口を覆っている。
黒い髪は乱れ、執務机の上のインク瓶が倒れる。
『ああ、何処かで見た光景だ』と、エルビン・スミスはそれだけ思った。
彼には、ただそれだけの時間であった。