愛にきをつけてね
リヴァイさんは、わりにお喋りだ。
リヴァイさんはその日も俺を呼び付けるなり、開口一番にこう言った。
「今日も靴下が丸まって洗濯籠に入れられてやがった。」
なあオイ、信じられるか?エレンよ、とこうだ。
リヴァイさんの愚痴は細かい。
洗濯物の裏表から玄関の靴の揃え方、本棚のカ行とサ行のあいだにヤ行の作者の本を入れること、ボールペンの蓋がすぐに失くなること、トイレットペーパーの芯がそのままなことなどについて。
この非常に細かく多い愚痴は勿論、リヴァイさんの旦那さん、エルヴィンさんについての愚痴だった。リヴァイさんとエルヴィンさんは結婚して八年になる。専業主夫のリヴァイさんと違ってエルヴィンさんは日中お仕事で家にいない。だから俺は会ったことはないけれど、リヴァイさんの話では、横の物を縦にもしない怠惰な性格で、上からの高圧的な物言いの、稼ぎが良いだけが取り得の亭主だと言うことだった。
けれどリヴァイさんはそんな愚痴を、決して俺以外には口にしない。ひたと黙って粛々と玄関を掃き清めているリヴァイさんは、近所の高校の奴らには評判の奥さんだ。翳のある色気で、取っ付き難い雰囲気だけれど、意外に気安く挨拶をしてくれるし、お節介な一言だってくれる。口は良くないのに、そのギャップが堪らないと、噂をする男も絶えないのだった。
例に洩れず、ちかくの高校へ通う俺も、リヴァイさんに憧れていた。
「おはよう。……ちょっと今朝は遅えんじゃねえのか。そろそろ予鈴だ、もうちょっと早足で歩け。」、
「お疲れさまだったな。マフラーちゃんと巻いていけよ。……馬鹿は風邪引かねえって言うが、ありゃ嘘だ。風邪引いてる馬鹿になりたくなきゃあ、コートの前も閉めてくんだな。」、
「オイ、今芋が焼ける、食ってけ。……ああ?庭を掃いた葉っぱで俺が食べるついでにだ、別にお前らのためにしたわけじゃねえ。余すよりいいってんだ。遠慮するな。」、
「……いいところに通り掛かったな。狙ってやがるのか?今日はぴろしきってのに挑戦したんだが、まあ、分量を間違えた。」
と、こういったふうにだ。
そこらの男子高生なんかはこれでイチコロだ。いつ何時でも空腹の野獣どもに、餌付けはてきめんに効く。実際それで、リヴァイさんに惚れて告白したやつなんかは大勢いる。勿論リヴァイさんは尻軽なんかとは違うから、全員ていねいにお断りされている。まあ、当然のことだ。リヴァイさんは身勝手な夫にも従順で、貞淑な、あこがれの奥さんなのだから。
感情のままに一度告白して玉砕したけれど諦め切れなかった俺は、告白をし続けた。毎日、朝と夕の二回だ。
「リヴァイさん、おはようございます、好きです!付き合って下さい!」
「エレン、おはよう。断る。」、
「リヴァイさん、こんにちは、好きです!付き合って下さい!」
「よう、エレン。断る。……睨むな、ホラとっとと帰りやがれ、父さん母さんが心配するだろ。」
「子ども扱いしないで下さいあと三年で成人です!好きです!帰ります!」
「寄り道すんじゃねえぞ。」
と、だいたいはこういう感じで往なされるのが常だった。
一年続いて二年生になった俺は、自分の語彙の無さに気が付いた。『口説く』ということを知ったのだ。
「アルミン、辞書貸してくれ。」
「いいけど、何の?英和?古文?」
「何か、語彙の増えそうなアレだよ!あるだろ、何かそういうの」
「……確かに君には必要みたいだ、エレン。」
どうしてか憐れんだような表情で差し出されたソレを借りて俺は、いつもの告白にもう一文足すことを心がけた。
「おはようございますリヴァイさん、好きです!リヴァイさんの黒髪を梳かす櫛になりたい!エレンです!付き合って下さい!」
「座右の銘みたいに言うんじゃねえ……おはよう。馬鹿言ってないでとっとと学校行ってこい」、
「こんにちはリヴァイさん、好きです!貴方への恋心でその、俺の小鳩のように繊細な、アレ、心臓が?張り裂けそう?です!付き合って下さい!」
「もう黙ってろ……」。
だいたいこういった感じで、成功してるのか失敗なのかは分からないけれど俺とリヴァイさんの挨拶は続いた。特に何の進展も無かったが、とにかくそれは、一年続いた。
どんよりと曇った日の夕方だった。リヴァイさんは朝夕と玄関へ箒をかけていて、俺はいつも、その時間を狙って登下校をするようにしていた。
リヴァイさんがテキパキと玄関先の石畳を掃き清める様は見ていて気持ちの好いものだった。ジャッジャッと竹箒の鳴る小気味の良い音が、その日はどうしてだか、鈍って、ずるずるとした音に聴こえたのだった。普段はシャンと伸びている背筋も、心持か曲がっているような気がした。
「こんにちは、リヴァイさん。……何か、どこか御加減でも悪いんですか。落ち込んでるような顔、されてる気がするんですが……」
「……そうか?……歳のせいだろ。夕方には水分も抜けて顔色もくすんじまうからな」
「いえ、お肌はその、いつもどおり御綺麗なんですけど。あの……俺で良ければ、聞きますよ。」
むしろ、聞きたいです、と畳掛けると一瞬、思い悩むような素振りを見せたリヴァイさんは、顔を上げて頷くと、家の中へ入っていった。
「上がれ。……茶のひとつくらい、出してやる。」
玄関から出した白い手をヒラヒラとさせて、リヴァイさんが俺を呼んだ。緊張気味に家に入った俺を待っていたのは愚痴と、リヴァイさんのいやらしい身体だった。
通い詰めて言い募っていた毎日に比べてあまりに呆気なく、俺は童貞を卒業してしまったのだった。
*
そういうふうにリヴァイさんと俺の関係が始まって、もう三ヶ月になる。相変わらずリヴァイさんは旦那さんの愚痴を零し、俺はというと、そうですか、と聞いているうちにどんどんむらむらとしてしまって、喋っているリヴァイさんの服の下を早く見たくって、あちこちまさぐって脱がしてしまう。リヴァイさんもいつの間にか愚痴を言い終えたのかそれとも愚痴どころで無くなってしまうのか、気づくと俺の下で乱れたりしているから、まあこれでいいんだろうと思う。
「は、ハ……ッ。……あー、リヴァイさん、サイコーです……」
「はあ、あ……。や、抜ける……」
セージョーイで互いに達したあと、ぐちゃぐちゃになってくっ付いたようになっている下半身を離そうとすると、リヴァイさんが掠れた吐息で切なげに身を捩った。射精したばかりで、しかも出し足りない俺のチンポはまだ芯を残していて、それがゆっくりと抜けるのが、リヴァイさんにはどうにも堪らないようだった。
「あッ……ンン、えれん……」
悪くなかった、と濡れた声で呟かれて、股間のモノの硬度は一気に回復してしまった。俺がゴムを外しているあいだ、気だるげに横たわったままのリヴァイさんの肢体は時おり震えていて、さっきまでの抽挿の快感を引きずっているのが見て取れた。
「リヴァイさん、あの、もう一回」
したいです、リヴァイさんの中に挿れたい、と熱い吐息で強請る。
「……調子に乗るな、クソガキ。」
そう言いながらも、耳の後ろを舐めるのを嫌がる素振りも無いし、太股の辺りに俺のガチガチのソレを押し付けても、リヴァイさんの股間のアレがぴくんと可愛い反応を返してくるだけで、見せ掛けの抵抗ひとつ無いのだった。
「だってもう、無理ですよ。そんなエロい格好して」
リヴァイさんの身に付けていたのは、それは破廉恥な下着だった。胸元を飾る黒い華奢なレース、薄桃色の乳輪と珊瑚色の乳首と敏感なその周りを覆っている薄い布は透けていて、眺めているとソワソワしてしまう。編み上げのようになっている黒いリボンは、主夫なのにピッチリと割れた腹筋の窪みを縛り付けて強調していた。リボンと繋がっているパンティ部分は、もう到底パンティと呼べないくらい、布が無い。お尻のほうには編み上げの紐があるものの、股間に当たる部分はまるッと刳り貫かれていて、乳輪と乳首より少し濃い色のチンポとその周りのリボンとが先ほど出した精液でぐっしょりと濡れている。ガーターベルトというやつも片方は金具が外れてしまっているし、もう片方も、太股の内側に張りついているストッキングが伝線してみっともなくなっている、そういういやらしい下着だった。
「……ねえ、俺が来るから、これ着てくれたんですか。」
そうですよね、と言うと、リヴァイさんは照れて拗ねたようにフイと横を向いてしまった。
「……趣味だ。」
いいから、とっとと寄越せ、とリヴァイさんは強がって言った。強がりの証拠に、開いた脚のあいだ、ゼリーで濡れたアソコはひくついて俺を待っていた。
「挿れちゃいます。……あ、ゴム」
リヴァイさんがいつもゴムを置いてくれている枕元を探ってみたけれど、そこには何も無かった。
「ねえリヴァイさん、予備のゴム、あります、か」
訊ねて振り返ると、リヴァイさんは「ア。」とちいさく呟くと、何か思うところがあったのかちょっと顔を赤らめて、片手で口元を覆った。
「?リヴァイさん、ゴムって。」
「……ああ、ある。ある、から」
ちょっと待て、と言ってリヴァイさんは起き上がると、殆ど裸のような下着姿のまま、ぎこちないような足取りでベッドの横のちいさな抽斗の前に屈み込んだ。
妙にこそこそとしているのが気になって、俺は抽斗の中を覗き込んだ。
「あ。」
「アッ!」
オイ、と言ってリヴァイさんが隠した抽斗の中には、俺の使っているいつものコンドームのピンクの箱と、イチジク浣腸、拡げるときに使うゼリーのチューブ、そしてもう一つ、随分とギラギラしたパッケージの箱が納められていた。玉虫色に鈍く光っている。
「XL」
思わずヒョイと抓み上げて箱の文字を読み上げると、リヴァイさんはまたアッと声を上げて、箱を取り返そうと手を伸ばした。高い位置で箱を掲げると、まるで俺が意地悪しているような構図になる。
「何ですか、コレ。XLサイズのゴムとかあんだ?やべーな。……あ、もしかして、コレの?」
箱の横に納められていたのは、やけにデカい、ラップで巻かれたディルドだった。取り上げて、ラップを外す。シリコンのような素材のソレはずっしりと重く、質感も妙にリアルで、カリの張り出し具合やところどころ青い血管がうねうねと浮いている感じなんかは、ゾッとするくらい本物めいていた。太さと長さはちいさな子どもの腕ほどもあって、なるほど、コレに被せるのならXLサイズしか無理だろうな、という気がした。
「普段、こんなので遊んでるんですか?」
「……たまたま、何となく買っただけだ。」
「そうなんですか?この下は?……うわ、他にもオモチャ、かなりあるじゃないですか」
下の抽斗を開けると、今度は玩具ばかりが入っていた。色んな色や柄の幾つかのローター、エグイ形のバイブ、大小のアナルビーズやプラグ、手錠や目隠しもある。
「……リヴァイさん、コレ。いつも、ひとりで使うんですか?それとも……」
ベッドの上に両手をついて、リヴァイさんは赤い頬で俯いていた。半眼に開いた瞼の上で長い睫毛が震えている。俺はそんなリヴァイさんに、何だか酷くしたいような気持ちになって、特大のディルドにXLのコンドームを被せて差し出した。
「してるとこ見せて下さい、リヴァイさん。」
御願いします、とディルドの先で唇をなぞると、リヴァイさんは最初、戸惑いがちに震える赤い舌を伸ばしてソレをちろりとひと舐めした。そしてパチリと一度瞼を閉じるともう、挑発するような上目遣いで、ゴムの先の精液の溜まるところをぐりぐりと押し潰すようにしゃぶった。贋物のたっぷりとした袋から太い幹へ、裏筋をなぞり上げるようにして、それは丁寧に、リヴァイさんはディルドに愛撫を施した。
大き過ぎるソレはリヴァイさんのちいさな可愛らしいお口に全部は到底納まらず、そのうち、ぐぶじゅ、ぐじゅ、と下品な音を立てて亀頭の辺りをしゃぶるばかりになった。
「……ふ。」
唾液でグッショリと濡れ、テカリを帯びたディルドを手に取ったリヴァイさんは、白く、未だ瑞々しい太股をみずから開いて溜息を吐いた。
「あ…………。」
そして瞼を閉じると、そのまま、ディルドをいやらしい穴へ当て、行為の際のゼリーと、唾液とが雑じった粘液にぬるぬると滑らせて感じ入っている。会陰を押されるのがいいのか、穴の皺を伸ばして潰すように擦れるのがいいのか、それともその両方か、リヴァイさんは暫く、発情期の犬のように腰を振ってディルドに擦りつけていた。
「ン、ンッ…………」
リヴァイさんは閉じていた瞼を薄っすらと開くと、ついにディルドの先を濡れそぼったアソコの入り口へ当てて、グ、と挿し入れた。
「はいる、ア、拡がるッ、あ、あ…………~~~~ッ!」
本物のチンポそっくりの馬鹿でかいディルドが、小柄なリヴァイさんの狭いアソコを拡げて、ぐぷぷ、と入っていく。自分の手で挿入しているはずなのに、リヴァイさんは時たまビクッビクッと、まるで自分以外の誰かの手に翻弄されているかのように、不意の快楽に震えていた。
「は、あう……。ン……ッ、はあ…………ッ」
ゆっくりと時間を掛けて、やっとのことで全部を胎の中へ納めると、リヴァイさんはまた深い息を吐いた。ふう、ふう、と息をするたびに中が収縮して太いディルドを食い締めてしまうのだろう。呼吸ひとつでも、リヴァイさんのいやらしい肉体は気持ち良くなれる。
リヴァイさんの狭い中へ挿れたときの感覚を思い出して、俺のチンポはビクついた。
「ん、ンぅ…………ッ!」
奥まで入れていたソレを引き出すと、リヴァイさんはぶるりと肩を震わせた。
「あう…………ッ!」
そしてまた息を吐きながら、中へ大きなモノを突き入れる。リヴァイさんのキツキツのアソコは可哀想になるくらい、目いっぱいに拡げられて贋物のチンポをけなげに頬張っている。
暫くゆっくりとした抜き差しを繰り返すと、リヴァイさんは眉根を寄せて頭を振った。黒髪と汗とが左右へ散って、リヴァイさんは、足りねえ、と荒い息で呟いた。
「リヴァイさん?」
リヴァイさんは鏡台から長い背凭れの椅子を引き出してくると、手に余る大きさのディルドの袋の下の部分を、座面へくっ付けてしまった。どうやらそこに吸盤があるらしい。
椅子から生えたチンポの上にリヴァイさんは跨り、腰を落としていく。
「あッ、ああ、入る……ッ、でけえッ…………!」
リヴァイさんは黒いレースのリボンで縛られたようなスケベな格好で、ずぶずぶとチンポを飲み込んでいった。 大胆なM字に開いた太股にはエッチな下着の紐が食い込んでいて、充血したように赤らんだ狭いアソコにずっぷりと大きいチンポを咥えている様は、『奥さん』なんて上品に呼べないくらい、これ見よがしで見っとも無くて、スケベだとしか言いようが無かった。
「はッ、おく、奥くるッ、おくッ、ああ……~~~!」
リヴァイさんは息を吐き吐き腰を落として、じりじりやっていたが、ついににゅぶうッとリヴァイさんが体重を掛けて尻を椅子へ強く押し付けるようにすると、ついに極太の根元までがリヴァイさんの狭い尻の中にスッカリ納まってしまった。ディルドの幹がアソコをミチミチのキツキツにしている。呼吸の途中で不意にソレを食い締めてしまったのかリヴァイさんが、はうッ、と悲鳴を上げて仰け反った。
奥までズッポリとハメ込んだリヴァイさんはさっきまでのとろんと蕩けたように恍惚とした表情から打って変わり、強い刺激に切羽詰って息も絶え絶えにそのきれいな顔を歪めている。
「ああ、凄ぇ、ッ、おく、奥まで全部クるッ……!」
ゆさ、ゆさ、とリヴァイさんが大きく腰を揺する。リヴァイさんの丸い小尻は汗ばんで、大胆に上下に揺れる。圧巻だ。伝線したストッキングのせいで、リヴァイさんの意外にむっちりとした太股は、いっそう肉付きが良く見える。素晴らしい視覚効果だった。
「ンッ、あッ、あッア、ッ!」
長くて太い、物凄いのをアソコからズルッと引き出して、また、バチュンッと打ち付ける。好きに腰を振って感じている姿は、凄かった。後ろ手に反らせた胸の先ではぽってりとした乳首が色づいて吸って欲しそうに尖っている。
「ああッ、あッ、あ、ッ……!」
汗の垂れて落ちていく腹筋の溝から臍の魅惑的な凹凸、そして何より、リヴァイさん自身のチンポはもうパンパンではち切れそうに張り詰めて、リヴァイさんが腰を振って化け物ディルドを奥へ招くたびに、ぶるんぶるんと重そうに揺れるのだった。先走りが飛んで床を汚す。
「あ……~~~ッ、おく、イイッ、奥、おくまでクるッ、いくッ、もうイくッ、いくいくッ……~~~!」
リヴァイさんは好きで腰を揺らしている癖にイヤイヤと黒い髪を振っている。凶器のようなソレに、自分の意志で無く強引に犯されているようにさえ見えた。贋物のチンポに善がり狂っている凄まじい痴態を目の当りにした俺は旦那さんからリヴァイさんを寝取っているはずなのに、今この時にはまるで、ほかの男にリヴァイさんを寝取られているような気持ちになった。俺を可愛がってはくれるけれど、リヴァイさんはヤッパリ他人の奥さんで、今この時にだって、別の男のチンポを入れて悦ぶいやらしい遊びに興じて快楽に浸りきっている。
俺はそれに嫉妬とほんの少しの怒りを感じて、もうあとちょっとで達しそうに先走りをダラダラと零していたリヴァイさんのチンポへ手を伸ばした。
「あッ!?や、えれんッ、いく、いくからッ!」
チンポを握り締められリヴァイさんはハアッハアッと荒い息で首を振った。泣きそうだ。
「リヴァイさんが俺以外のチンポでいくとこ、見たくないです。」
入れましょう、俺の、と言うとリヴァイさんはチックのように瞼をひくひくとさせながら、すなおに頷いた。
そして太股を震わせてニュポン、とディルドを抜くと、M字に脚を開いたまま、俺へ言った。
「…………はやく。」
リヴァイさんの灰色の瞳が潤んで蕩けた様は、冬の水たまりの氷がぐじゃぐじゃに溶けてしまったみたいだった。ガーターベルトが外れ、太股からずり落ちたあとには、赤い蚯蚓腫れが出来ていた。リヴァイさんはその蚯蚓腫れから脚の付け根へ指を這わせ、ひくひくと物欲しげな下の口を人差し指と中指で押し広げた。
ガチガチになったチンポを、ほっそりとした白い指のあいだでしとどに濡れそぼったソコへ突き入れると、リヴァイさんと俺はもうそれだけで、あっと言う間にイってしまったのだった。
*
後日、俺ははじめて街中で、リヴァイさんと旦那さんが連れ立っているのを見つけた。
旦那さんは背の高く、リヴァイさんをすっぽりと隠してしまうような広い背中を持った、かなりのいい男だった。厚手のフエルトのコートの地は値段の張りそうなものだったし、リヴァイさんの選んだものかも知れなかったけど、趣味が良くって、大人の男性という感じがした。
それにリヴァイさんの愚痴が嘘か冗談のように、人前でリヴァイさんを大事に扱っている。段差では手を貸すし、店のドアーを開けてやるし、自分が車道側を歩くやり方は成る程紳士的だと思った。
すれ違う女たちは(男もいた)熱い視線で旦那さんを見るのに、旦那さんはそれを意にも介さない。何よりあからさまなのはリヴァイさんの態度だ。俺といるときと全然違う、脳みそのとろけたような頭の悪い、ぽうっとした顔でエルヴィンさんを見ている。遠慮がちに夫の腕に手を回しているものの、ギャラリーに対してどこか得意げな表情だ。
「……何だよ、ベタ惚れじゃんか。」
俺は呟いて路上の缶を蹴ったけれど、ふと気がついたリヴァイさんは俺にツイと視線をくれて口の端で笑ってくれたし、そのまた後日、あの特大のディルドはエルヴィンのモノの型を取ったんだ、でけえだろ、アレでイくと事後はぐったりで家事なんかやる気も起きやしねえ、なのにアイツは、とこれまた愚痴に見せかけつつ実は自慢げに教えてくれた。
リヴァイさんは旦那さんのことが、好きで、好きで、好きで、好きで、好きで、好きで、もう逆に憎いくらいだと言う。だから俺が調子に乗って、旦那さんの愚痴に同調するとちょっとムッとするし、かなり面倒くさい。面倒くさいけれど、俺はそんなリヴァイさんも好きだから、リヴァイさんの愚痴と遊びに付き合ってあげるのだ。
俺はそんな訳で、とんでもなく優しい。こんなに優しくて人間が出来てる俺を弄んでるリヴァイさんは酷いひとだなあと思う。けど俺もリヴァイさんのことが、リヴァイさんが旦那さんを好きなほどとは言えないかも知れないけど、好きで、好きで、好きで、好きで、好きで、好きだ。俺の身長はこの一年で三センチ伸びたし、俺は何より、リヴァイさんに愚痴を零してもらえるくらいには、調子に乗って買ってきたオモチャをあの抽斗に仕舞ってもらえるくらいには、可愛がってくれてると思っている。(これは、自惚れではないと思う。)
だからリヴァイさん、これからの愛に気を付けてね。
愛に、気を付けてね。